ゾンビ、死霊、と続けてきたので、次はやはり”サメ”だろう。
最近では『温泉シャーク』という映画が熱海近郊から生まれ、まさかの大人気になっている。続編も出るようで、とても楽しみだ。
このまま湯水を吹き続けてシリーズ化まで漕ぎつけて欲しい。
という訳で今回はみんな大好きサメ映画の感想だ。
名だたる迷作達の群れに潜む小さなサメ。その名は『シャーク・恩返し』。
内田清輝・グ弍 (グラマーエンジェル 危機弍発)さんが作成したこの作品は彼のyoutubeでは見れないようだ。短すぎる上映時間であることから映画館でも見れないだろうし、DVD化も考えてはいないだろう。となると、配信サイト上の限られた期間でしか見られない可能性がある。
まず注目すべきは上映時間で、この映画は二分しかない。
正確には一分五十五秒で、前後に挟まっている五秒の暗転時間を含めると本編は一分四十五秒となる。
忙しい現代人にやさしい、小さな小さなサメ映画。
これを早回しで見る者は流石にいないだろう。
以下がこの映画のあらすじだ。
『3年前に地球人に助けてもらった恩義を返すために、地球に迫り来る宇宙ザメと戦い、そして、和解するまでを描いたシャーク・スペクタクル作品。』
実に簡潔なあらすじだ。もはやログラインといっても差し支えないだろう。
『戦い、そして、和解』の句読点の付け方に溜めがあるあたりにこだわりを感じる。
内容が短すぎるので、簡潔にまとめていこうと思う。
注意事項
この映画を視聴する上でたったひとつだけ問題がある。
本編ではパチンコを想起させる演出が過分に含まれているため、ギャンブル依存症で苦しんでいて、パチンコ店に行く衝動を抑えて生きている人にとっては辛いかもしれない。
この感想のせいでパチンコに行ってしまったとしても私は責任を取れない。そこはご了承いただきたい。
短すぎるその内容
タイトルが『シャーク・恩返し』なので、私はてっきりサメが恩返しをするものだと思い込んでいたがそうではなかった。
“宇宙人の主人公が”地球人に助けて貰った恩返しとして、侵略者であるサメと戦うのだ。
パチンコを思わせるBGMとSEのなか宇宙ザメと格闘し、ドラゴンボールに出てくる『天空×(ぺけ)字拳』のような必殺技を使うも、苦戦を強いられる主人公。
宇宙ザメに打ち勝つためにそろばんを取り出し、必殺技「そろばんポイズン」によって無事に宇宙ザメを討伐する。
しかし主人公はここで「暴力では何も解決しない」と訴え、そろばんの力を借りて時間を巻き戻し宇宙ザメを蘇生させた。
そして平和な和解へと繋げ、故郷へと帰っていくのだった。
考察
感想を書いている時点でお察しではあるが、私はこの映画に一時期ハマっていた。
本編が2分しかないからか、テンポが非常に良い。不思議と何度も見てしまう中毒性がある。
何度も何度もこの映画を見た私の妄想的考察を、その成果を、ここに書いていこうと思う。
まず背景の看板が日本語なので、舞台が日本であることは間違いない。
主人公は3年前に地球人に助けられたことがある訳だが、具体的にどう助けられたかは不明だ。
上映中に主人公の名前は登場しない。なので勝手に「エナ」と名付けている。
名前の由来は主演(声の出演)である『ナギノエナ』さんからだ。
スタッフロールを見る限り、この方は声優だけでなく、音楽の作曲もしている。
わざわざ”トロピカルな音楽の作曲”と書いているあたり、作為を感じざる負えない。
戦闘描写にパチンコを想起させるトロピカルなBGMとSEが散りばめられているのは何かの暗示なのだ。
となるとエナか宇宙ザメのどちらかが、パチンコに関わっていることになる。
パチンコを善と見るか悪と見るかが肝要だ。
ここで鍵となるのは、エナが武器として使った”そろばん”だ。
そろばんは、計算機である。「そろばんがあるじゃないか!」という台詞には、計算が得意であることを示唆しているのだ。
私はパチンコの経験があまりないが、パチンコを打つ人間は大抵、確率を強く意識している。つまり、計算が得意になった背景にパチンコがあるのではないだろうか?
そうなると悪となる宇宙ザメのメタファーが気になってくる。私は少し調べた。
すると「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」が2022年3月に改定されており、そこにはオンラインカジノに対する内容が明記されていたのだ。
宇宙ザメはオンラインカジノを代表する外国勢力で、エナはパチンコ業界を代表する日本勢力。暴力でこの問題を解決することはできず、和解にて合意するしかなかった。
これらのことから、私は以下のような結論をつけた。
主人公エナは3年前、幾度も理不尽な目に遭い、自分に取り柄は無いとすら思っていた。
しかし日本のパチンコ店で大勝ちしたこときっかけに人生の窮地から脱し、その成功体験によってそろばん(確率計算)が得意であることを自覚した。
オンラインカジノが自国へと襲来する。初めは暴力による抵抗をしていたが、時が巻き戻る程の錯覚を起こすような多く時間をかけて得意の計算によって導き出された答えは、暴力ではなく和解という名の談合であった。
いつのまにか、陰謀論のようになってしまった。
せめて、作品を貶める気は一切ないことだけは伝わってくれると嬉しい。
まとめ
エナのキャラ造形と声がとてもマッチしており、テンポの良さがそれをさらに引き立てている。
宇宙ザメと和解する際三カメ目で尾びれが”b”と形を変えていたり、背景の看板に『不審者を見かけたら110番!』と皮肉めいた言葉が書かれていたりと、細かい箇所にも遊び心が感じられる。実に伸び伸びとした作品だった。
私は最終的に穿った目線で見てしまったが、普通に見れば、サメ映画が好きかどうかに関わらず十分楽しめる良作だ。
アニメのサメ映画はとても珍しいし、まぁ、サメはCGなのだが…..それを含めて私は好きだ。
質を保ってこの超短編の時間を伸ばしていければ、その辺のサメ映画なら圧倒できるのではと思う。
製作者様のyoutubeチャンネル登録は済んでいるので、今後の動向に期待している。

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